下関フードテクノフェスタ2010関連の「魚醤油」と「抗酸化測定」について 原田和樹教授に聞く |
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2010年5月26日 掲載 | |
Q:「魚醤油」と言えば、以前の記事の「下関フードテクノフェスタ、参加団体の紹介、第2弾」に記載してありました様に、ヤマカ醤油(株)から出展される「ふく魚醤」、「くじら醤油」、「うに魚醤」と、食品科学科との連携が述べてありました。開発に携わった原田先生に、その辺のところを、もう少し詳しくお聞きしたいと思います。 了解致しました。まず、これらの魚醤油は、食品科学科の学生達と一緒に開発した商品です。私達は、下関ならではの特産品で魚醤油を創りたいと願ったのです。そして、紆余曲折を経て、ようやく試作品が完成しました。魚醤油に取り組んで、既に5年が経っていました。 Q:なぜ、そんなに時間がかかったのですか? タイのナンプラーを思い浮かべて下さい。従来の魚醤油が、臭みも味もきつくて、とても、今の日本の若者に受け入れられないと思いました。東南アジアでは日常の調味料であっても、まだまだ日本では一部の人の嗜好品です。いわゆる、通(つう)好みという訳です。そこで、もっと、味や匂いがまろやかな魚醤油の開発に取り組んだのです。発酵だけでも半年はかかりますし、いろんな条件を変えて試作をしましたので、時間がかかってしまいました。携わった学生達も、世代が変わっていきました。 |
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試作した魚醤油群の一部 |
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Q:商品化については、どんな経緯だったのですか? 商品を製造する際の0.5トンの大量醸造はヤマカ醤油(株)に引き受けて頂きました。販売は、ヤマカ醤油と小川うに(株)に推進して貰っています。私や学生達は、大量醸造の仕込みを行うところまで手伝って、あとはヤマカ醤油のプロにお任せしました。さすがに学生の手作り商品では、衛生の観点など、不安がありましたので…(笑)。 |
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大量醸造の仕込みを手伝う食品科学科の学生達(ヤマカ醤油(株)の醤油工場にて) |
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Q:せっかく水産大学校が開発しても、商品になってしまえば、水産大学校が開発したことが判らなくなってしまう心配はないのですか? いえいえ、ご心配には及びません。3つの商品のラベルには、ちゃんと、「独立行政法人水産大学校と共同で開発した」旨が記載してあります。 |
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完成した魚醤油群の商品(左から「ふく魚醤」、「うに魚醤」、「くじら醤油」) |
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Q:商品化後の展開はどんな感じなのですか? 今は、下関大丸、下関市立水族館「海響館」の売店、高速道路の壇ノ浦のパーキングエリアの売店、下関カモンワーフのお土産店などに置かれています。そうそう、この下関フードテクノフェスタ2010の開催と同時期になってしまうのですが、東京の新宿高島屋で開催されます第3回小学館「大学は美味しい!!」フェアの水産大学校のブースで、これらの魚醤油の販売が行われます。 |
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昨年の第2回小学館「大学は美味しい!!」フェアの水産大学校ブースの魚醤油販売風景 (東京新宿高島屋にて) |
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Q:それは楽しみですね。ところで、魚醤油と「抗酸化測定」が何やら関係があると聞きましたが…。 そうなんです。水産大学校は、変な言い方ですが大学ですので、ただ単に、魚醤油を創ることが目的ではなかったのです。私達は、創作した魚醤油に健康増進機能の一つである抗酸化性を持たせることが、本当の目的だったのです。 Q:ああ、抗酸化という言葉、聞いたことがあります。なんでも、体を錆びさせない力、すなわち、アンチエイジングや癌予防につながると聞いていますが…。 その通りです。よくご存知ですね。ところがです。この抗酸化性の測定法がたくさんあって、もはや日本では群雄割拠の様相を呈しているのですよ。こんなに測定法がバラバラではいけないと、アメリカが農務省を中心に、測定法の統一が図られました。それが、オーラック法という方法です。私達は、いち早く、その方法を取り入れ、前に述べた魚醤油やその他の水産物の測定をしました。そうすると、「ふく魚醤」や「くじら醤油」に、高い抗酸化性があることが判明したのです。 Q:へーえっ、そうなんですか。魚醤油を創るだけでなく、それが持っている抗酸化性まで最新の方法で測ってしまうとは、さすが、食品科学科ですね。 一緒に研究した4年生の学生が、成果を日本農芸化学会の全国大会で初めて発表した時は、立ち見の観客が演台の近くまで押し寄せる大盛況だったのですよ。幸い、その学生の名前が入った英語の論文がヨーロッパの国際学術誌「Molecular Medicine Reports(分子医学報告)」に採択され、近々、出版される予定です。 |
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Molecular Medicine Reports誌の最新号の表紙 |
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Q:水産大学校の学生は大活躍ですね。ところで、原田先生は、何もしないのですか? スミマセン、すっかり影が薄くなってしまって。有難いことに、今回の第3回小学館「大学は美味しい!!」フェアで、特別公開講座の講師として選んで頂き、魚醤油とその抗酸化性について、東京で講演して来ます。一緒に講演する演者の中には、青年コミック誌の「ビッグコミックオリジナル」の「玄米せんせいの弁当箱」の作者で有名な魚戸おさむ先生もおられたりして、随分と賑やかな公開講座になるみたいですよ。 それは楽しみですね。下関フードテクノフェスタ2010と第3回小学館「大学は美味しい!!」フェアの成功をお祈りしています。今日は、インタビューを有難うございました。 |