<背景・研究目的>
鮮魚の美味しさの評価は魚の種類によって異なると考えます.例えば,マグロ肉の場合,美味しさは肉に含まれる脂の含有量に依存しています. 他方,ふぐ肉の場合は脂質よりも繊維質が多く歯ごたえのある肉が美味しさに反映されます.すなわち,鮮魚肉の組織の状態が美味しさに関与していると考えられます. このため,肉に含まれる組織性状を調べることで,鮮魚の美味しさを客観的にかつ定量的に評価できると期待されます. 魚肉の組織性状を評価するためには,一般的には、魚を捌いて体内の状態や組織を見る,魚肉をすりつぶして化学成分を調べる, 魚の触感(弾力性など)を調べる,といった方法があると思います. しかし魚は鮮度が大事なため上記のような破壊的方法よりも非破壊的な方法が現場では望まれています. また,上記の評価には職人のような熟練度が必要であり,かつ職人によって評価の指標にばらつきが生じます. このことから,非破壊的で熟練度を必要としない評価方法や評価指標の開発が必要と考えます. そこで本研究では,高周波超音波を利用し,生鮮魚介類の体内における 肉質の状態や質の評価を非破壊的かつ視覚的に把握するための評価支援システムをソフトコンピューティングを用いて開発することを目的とします.

また魚肉に潜む寄生虫や異物,病巣なども,人間と同じように体外から診断することも可能でしょう. 以下の図は本研究の概要を示したものである.
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・魚肉のおいしさを非破壊的に評価できる
・非破壊評価におけるおいしさの定量的指標(基準)を設けることができる
・魚肉に潜む寄生虫や異物,病巣なども,人間と同じように体外から診断することも可能
・魚をベルトコンベアで流すだけで自動的に評価することが可能(将来の自動化展開)



現在、世の中に普及しているコンピュータはノイマン型コンピュータと呼ばれています. ノイマン型コンピュータでは、一連の動作をプログラムなどによってあらかじめ記述しておき、そのプログラムに従ってコンピュータを動作させます. いわゆるプログラムに記述したことしかできない頭の固いコンピュータ(ハードコンピュータ)、とでも言えるでしょう. またノイマン型コンピュータではきっちりと決められた数値に対して動作をします. 例えば、センサの値がXXになったらAの動作をさせる、といったことです. 現実世界では、センサ値は連続値ですし、センサ値も環境の状態によって様々に変わってきます(多様性).

一方で、私たちはどのようにしてこの世界で生きているでしょうか.
計画していない、想定していないことが起きても、それに対して柔軟に対応できると思います.
また、あつい、冷たい、暗い、明るい、などセンサの値で行動を決定するのではなく、非常にあいまいな感覚で行動を決定しています. このような曖昧性を許容し、かつ多様な状態に合わせて柔軟に対応できるコンピュータをソフトコンピューティングと呼んでいます.

ひとによってソフトコンピューティングの言葉の定義も様々ですが、ここでは上のように定義します.
このようなソフトコンピューティングを実現する技術や手法はさまざまにあります.
  ・ニューラルネットワーク
  ・ファジィシステム
  ・確率論と統計学をベースとする機械学習
  ・進化的アルゴリズム

これまでに沢山の手法が提案されてきています.
どれが一番いいということではなく、どの手法もそれぞれに特徴があります.
徳永研究室では課題に合わせて最も良い手法を利用する、あるいは無ければ自分たちで開発する方針で研究を進めます.




本研究ではノイズやアーチファクトが加えられ複雑に変化をする超音波信号から組織の状態を推定する必要があります. その推定にソフトコンピューティングを用います. 信号源のモデルをソフトコンピューティングで推定し,それをもとに組織の状態を特定します.




本来であればアレイプローブを用いて魚体をスキャンしたい所ですが,超音波装置は非常に高価なため, まずは狙い通りに魚体内を超音波で見ることができ,かつ信号から組織時の状態を推定できるかどうかを確かめる装置作りから行っています. これが「超音波魚体評価スキャン装置」です.まだ開発段階であり大きな進展はありませんが,魚体内を超音波信号で見ることができることは確認できています. 現在は装置のユーザビリティの向上を行っています.

下の図は開発中の超音波魚体評価スキャン装置.
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