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  公開講座

第16回水産大学校公開講座
ポスター画像
日時:
平成23年10月8日(土)13時〜14時30分
テーマ:
「漁業維新」
山口発 新しい漁業への取り組み

プログラム
山口県の漁業資源 −おいしい魚なぜ多い−
光と音に求める漁業新時代



※所属・職位・学位は、当時のものを掲載しております。
山口県の漁業資源 −おいしい魚なぜ多い−
水産大学校
水産学研究科
教授 今井千文
はじめに
山口県は3方を海に囲まれています。北西側は日本海、南側は瀬戸内海、そして両者をつなぐ西側の関門海峡です。この3つの海は、それぞれ異なる特性を持ち、豊かな漁業資源を育んできました。今回の講座では山口県の海で大半を占める日本海と瀬戸内海の漁業資源、特に底魚類について解説し、おいしい魚がなぜ多いのかを紐解きたいと思います。
さらに、資源管理を取り入れながら、おいしい魚をより多く得る方策についても考えてみたいと思っています。

日本海の漁業資源
日本海は最も深い所が約3800mで地球の海全体の平均水深とほぼ同じです。日本海は2層構造になっていて、西の端にある対馬の東西から暖かい対馬暖流が流れ込み、水深100m位まで分布します。200m以深には日本海固有冷水という3℃以下の非常に冷たい水が古くから貯まっています。山口県の底曳網漁業は暖かい対馬暖流の影響する海底にいる魚を多く利用しています。キダイ、アカムツ、キアンコウ、ムシガレイ、ヤナギムシガレイなどの漁獲量はいずれも全国屈指です。これは日本海の暖流系底魚類が山口県沖に集中しているという、絶好の条件に恵まれているためです。

瀬戸内海の漁業資源
瀬戸内海は日本海と異なり、浅くて狭い海です。ここで獲られる魚は沿岸性で古くから利用されてきたなじみ深い種になります。カタクチイワシ、マダイ、サワラ、マナガツオ、ハモやクルマエビが代表格です。浅くて、古くから漁獲さていれるため、トラフグやマナガツオのように乱獲により資源が枯渇してしまった魚種も見られます。

山口県の魚はなぜおいしい
魚のおいしさは、どう獲り、どう扱い、どう調理するかで大きく変わります。山口県の漁業者は魚の扱い方を良く知っています。また、消費者もそのおいしさを知り、需要が大きいため、おいしい魚が全て大都市へ流出することなく、地元にも出回ります。

おいしい魚をもっと食べたい −資源管理の重要性−
資源管理は魚の獲り方を改善して、魚を増やそうという考え方です。一般に若齢の小型魚は身が柔らかく、おいしくないため、低単価です。獲り方を工夫することで、大型でおいしい魚を増やすことができ、漁業者にとっては低単価問題の解消に繋がります。




光と音に求める漁業新時代
水産大学校
海洋生産管理学科
教 授 濱 野 明
 かつて日本はアジアの国々に先駆けて、明治維新を経て近代国家として生まれ変わった。当時欧米列強の植民地であったアジア諸国では日本の明治維新を模範として改革や独立運動を行おうとする動きが盛んになるなど、これら諸国に先導的な影響を及ぼした。明治維新の原動力となったのは当時の日本の若者であり、そこには「新生日本」建設に向けた、とてつもないエネルギーが結集された。その結果、欧米に肩を並べる先進国として変貌する「明治維新」が成就された。
 今、世界は温暖化に象徴される地球環境と人口の爆発的増加による食糧をめぐる問題を突き付けられている。漁業問題に焦点を当てれば、国連食糧農業機関(FAO)は水産資源の約50%を「満限利用の状態」、約30%を「過剰利用または枯渇の状態」と、合計約80%が過剰漁獲かその前段階の満限漁獲の状態にあると報告しており、世界の水産資源の現状に対する不安が高まっている。一方、日本周辺水域の資源についても、総じて低位の水準にあり、今後の適切な資源管理処置が講じられなければ、資源の減少は一層深刻化し、このまま低い水準で推移すれば、国民への安定した食料の供給に懸念が生じると指摘されている。
 このような不安や懸念のもと、水産に特化した教育機関である水産大学校が果たす役割は非常に重要である。すなわち、世界の水産資源、漁業問題に率先して関心を持って勉学に励んでいるのは水産庁との関係が深い本校学生だからである。今回の公開講座では本校の教育にも一部触れながら新しい漁業への取り組みについてお話したい。
次に、水産業が果たすべき最大の課題は、言うまでもなく人類の生存にとって根本的に重要な食料を安定的に供給するための一翼を担うことにある。水産大学校における私たちの持つ知識、技術は限られているが、21世紀の「持続可能な開発」という命題の下、「生態系と調和した持続的漁業」の推進を図るため、光や音を活用した調査技術やLED光(発光ダイオード)と音響技術を組み合わせた新しい漁業への取り組みについても紹介したい。
 時代は大きく変わろうとしている。前世紀末に、FAOは「責任ある漁業」という規範を提言した。日本が、漁業先進国として科学的根拠に基づいた資源の管理及び持続的利用に関する先導的役割を果たすことが求められている。グローバル化のなかで、かつて漁業大国として世界の海を席巻してきた日本漁業は、今まさに世界に対していかに良いお手本を示せるかが問われている。