※所属・職位・学位は、当時のものを掲載しております。
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揺らぐ「食」ー水産物の安全・安心と生産者の挑戦ー |
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水産大学校 水産流通経営学科
助教 副島 久実 |
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1.揺らぐ「食」
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今、私たちの「食」を取り巻く状況が、大きく揺らいでいます。産地偽装問題、農薬・殺虫剤検出事件、O-157問題などが相次ぎ、私たちの「食」への不安が非常に高まっています。揺らぎの内容は、安全性問題だけではありません。大手スーパー主導による全国隅々までの効率主義の流通によって、大量で、かつ等規格の魚でなければ食料として流通されなくなり、おいしく食べられるはずの多くの魚が「規格外魚」として養殖の餌に回されたり、棄てられたりしています。消費の側面をみても、日本人の魚離れが指摘され、「多様な魚を色々な食べ方で食す」という日本の食文化が崩壊の危機にあるのではないかといわれています。さらに、海の環境問題も深刻化しています。
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サイズがバラバラだったり、ロットが揃わなかった魚の多くは「規格外魚」となってしまいます。
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2.生産者と消費者の乖離
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グローバル化が進行し、私たちは、世界中の様々な水産物を、いつでも、安く、簡単に手に入れることができるようになりました。切り身や加工品が増え、とても便利になりました。しかし一方で、消費者と生産者の距離は大きく隔離してしまいました。その結果、誰がどのように獲ったかわからない魚、姿も形もわからない魚を食べ、漁業や生産のあり方に無関心になっている消費者が増えています。安全性を強く求めながら、同時に、安さ・便利さもまた強く求めてしまいがちです。魚を提供する側も、消費者の姿が見えにくくなっているだけでなく、魚を単なる「商品」(=モノ)としか見ず、企業の論理や経済効率主義の中で、安全性よりも低コストや販売のし易さを重視させてしまいがちな状況が広範にみられます。
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3.生産者の挑戦と私たちに出来ること
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こうした状況の中で、魚をただ獲って出荷するだけでなく、安全・安心にこだわった獲り方や流通に取り組もうとする生産者や流通業者、生産物に自分たちの「思い」や「ストーリー」をも付加して消費者に届けようとする生産者の挑戦が始まっています。このような事例をいくつか紹介します。
私たち消費者も、自分たちの食生活や消費パターンについて見直し、水産物を単なる「商品」として見るだけでなく、その魚が食卓に昇るまでに関わった人々や地域に思いを馳せてみませんか。
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地域の魚を大切にしたいとの思いから、漁村女性グループによる加工販売活動が各地で活発化しています
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