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第12回水産大学校公開講座
ポスター画像
日時:
平成19年10月27日(土)13:00〜14:30
テーマ:
知らなかった!マグロの資源と消費の現状(いま)

プログラム
マグロ -地球規模での資源管理を目指して-
マグロの流通と消費 -食卓から考える私たちの魚食-



※所属・職位・学位は、当時のものを掲載しております。
マグロ -地球規模での資源管理を目指して-
水産大学校 海洋生産管理学科
講師 毛利 雅彦

1.世界的に関心が高い国際水産資源 - マグロ

 近年、国際的に重要な水産資源の一つであるマグロ類は漁獲強度の増大に伴い、釣獲率の低下や漁獲魚の小型化等の現象が顕著となり、世界的に資源の減少が懸念されています。

 現在、海洋生物資源の将来を地球規模で保護する目的をもって、組織的な取り組みがなされてきています。特に、三大洋におけるマグロ類の管理委員会として、太平洋には全米熱帯マグロ委員会(IATTC)、北太平洋マグロ類暫定科学委員会(ISC)およびマグロ・カジキ常設委員会(SCTB)、大西洋には大西洋マグロ類保存国際委員会(ICCAT)、インド洋にはインド洋マグロ類委員会(IOTC)、そして太平洋とインド洋にかけてのミナミマグロ保存委員会(CCSBT)があり、資源の保護・管理が国際的な管理下で遂行されつつあります。

2.マグロ類の種は?

 マグロ類には7種(標準和名:クロマグロ、ミナミマグロ、メバチ、キハダ、ビンナガ、コシナガ、タイセイヨウマグロ)に分けることが一般とされています。これら7種の内、マグロ資源として世界的に重要な魚種は前半に記載の5種です。

 わたくしたちが、鮮魚店などでマグロ類として目にする商品名は「生マグロ」、「ヨコワマグロ」、「本マグロ」、「メバチマグロ」など多岐にわたりますが、いずれもこの項の最初に記した標準和名の魚種いずれかに相当します。

3.三大洋に広く分布する高度回遊性魚類-マグロ

 マグロ類は、三大洋の広範囲にわたって分布する高度回遊性魚類です。これらのマグロ類をわたくしたちが水産資源として利用するためには、何らかの漁法で漁獲する必要があります。

 マグロ類を漁獲する一般的な方法として、釣、曳縄(ひきなわ)、定置網(ていちあみ)、まき網、延縄(はえなわ)があります。これらの5漁法の内、前半の3種では沿岸付近の個体を漁獲する場合がほとんどであるのに対し、後半の2種では沖合・遠洋のマグロ類を漁獲する機会が多くなります。
エチゼンクラゲのスープ

図1. メバチの主要分布域(青)と想定回遊経路(はえなわ漁業データより推定。数字は月を示す)
Mohri and Nishida, 1999, IOTC-WPTT,99/11(水産総合研究センターHPのインド洋メバチより)
(http://kokushi.job.affrc.go.jp/toppage.htm)

 図1に、演者らがIOTCへ提出したインド洋におけるメバチの主要分布域と想定回遊経路(Mohri and Nishida, 1999)を示します(同図は、図下のアドレスのHPへも掲載されています)。インド洋はモンスーンに起因する季節風が顕著で、これに伴い水温が大きく変化します。同洋におけるメバチはこの水温の変化に加え、溶存酸素量、成熟という要因が相互に関連して回遊するものと考えられています。
 図1は、日本のマグロ延縄漁船による操業データを用いて作成したものです。日本の延縄漁船は単に漁獲するだけでなく、資源の保護・管理に貢献するという視点で長期間・広範囲にわたって基礎データを収集してきました。我が国のマグロ延縄漁船によるデータがあるからこそ、マグロ類という高度回遊性魚類の分布・回遊などの現状をIOTCなどの国際機関において把握できるといっても過言ではありません。

4.マグロ類は吉見沖など日本海西部にも分布する

 図2は、下関市の鮮魚店でみることができる山口県・日本海沿岸産・コシナガの切身の写真です。マグロ類は、われわれの身近な下関近隣の海域にも分布しています。

日本海西部で漁獲されるマグロ類は、クロマグロとコシナガがほとんどです。両者は、外見が酷似しているため混同する場合がしばしばあります。

エチゼンクラゲのスープ
図2. 店頭に並んだ山口県・日本海沿岸産のコシナガ

日本海西部において両者を比較的、簡単に区別する目安として、水温が高い夏場に漁獲されるマグロ類の魚種はコシナガ、冬場に獲られる同種はクロマグロとして判断することができます。しかし、水温が変化をしつつある秋などには両者が混在しやすく、より正確な区分が必要となります(2007.10.21に遠洋航海へ出かけた学生・野崎君、三浦君の特別研究(2007.9.28発表)より)。

5.水産大学校練習船(耕洋丸・天鷹丸)におけるマグロ実習・調査

 近年、水産大学校の練習船ではインド洋で延縄を用いて成魚、日本海で表層トロールを用いて幼魚を対象にマグロ実習・調査を計画・実施しています。




まぐろの流通と消費 -食卓から考える私たちの魚食-
水産大学校 水産情報経営学科
准教授 三木奈都子
マグロに対する日本人の高い関心
 現在、欧米や中国を中心とした水産物消費の増加と世界的な水産資源の減少が示されているなかで、「今後、マグロを食べ続けることができるのか」と、マスコミがマグロ消費の継続について盛んに取り上げています。いかにマグロが日本人の関心を引きつけているかがわかります。その一方で、若年世代を中心に水産物消費量を減らす「魚離れ」が生じています。

マグロの流通と消費

 日本人の1人あたり平均マグロ購入量は近年、約1kgで推移しており、水産物種類別では常に1~2の上位を占め、かつ、消費エリアを広げています。それは、扱いやすい商材として量販店が多く扱い、特に近年の養殖マグロの増加がそれを後押ししています。

エチゼンクラゲのスープ
食べられなくなる?

全国定番水産物(マグロ・サケ・エビなど)の普及の陰で、姿を消す地方色豊かな水産物たち

 マグロに代表される定番水産物の普及は、輸入水産物の増加と水産物販売に占める量販店の割合の増加が強く影響しています。定番水産物の普及の陰で、水産物小売店の棚から姿を消しているのは、地方色豊かな地元水揚げの水産物たちです。天然資源を漁獲する漁業では、本来的には特定資源への漁獲圧力を高めずに多様な魚種をまんべんなく利用すべきなのですが、私たちの水産物消費は、扱いが簡便な特定魚種に集中する方向に向かっています。

地域水産物利用の動き

 このようななかで、地域特有の水産物を無駄にしないで利用していこうと、伝統食の見直しや地域の食材を活かした新たな食の提案が各地で行われています。このような動きを事例でご紹介いたします。

一緒に今後の私たちの食卓の水産物について考えていきませんか。
エチゼンクラゲのスープ
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