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  公開講座

第9回水産大学校公開講座
日時:
平成16年10月24日(日)10時〜12時
テーマ:
身近な海の生物(いきものたち)
−「里海(さとうみ)」の持つ豊かな自然−

プログラム
講演:海の草原「アマモ場」を知ってる?
講演:干潟を耕す生きものたち
講演:豊かな波打ち際の自然
身近な生物採集:前海岸



※所属・職位・学位は、当時のものを掲載しております。
海の草原「アマモ場」を知ってる?
生物生産学科講師
村瀬 昇
 波(なみ)が穏(おだ)やかで,河口(かこう)に近(ちか)い入(い)り江(え)や湾(わん),港(みなと)などでは,潮(しお)が下(さ)がると水面上(すいめんじょう)にまるで緑色(みどりいろ)のじゅうたんを広(ひろ)げたような場所(ばしょ)が出(で)てきます。よく見(み)ると,陸上(りくじょう)の草(くさ)と同(おな)じような細長(ほそなが)い葉(は)っぱが,ぎっしりと海面(かいめん)をおおいつくしているのがわかります。これはアマモという「海草(かいそう)」が,たくさん集(あつ)まってできた海(うみ)の草原(そうげん)で「アマモ場(ば)」と呼(よ)ばれています。アマモは,私(わたし)たちが食(た)べる「海藻(かいそう)」のワカメ,ノリあるいはヒジキなどと違(ちが)って,陸上(りくじょう)の草(くさ)と同(おな)じように,花(はな)を咲かせて種(たね)を作ります。また,アマモは,根(ね)や茎(くき)(地下(ちか)茎(けい))を海底(かいてい)の砂地(すなち)にはりめぐらせて,そこから葉(は)を海面(かいめん)に向(む)けて伸(の)ばしています。
写真 海面上のアマモ場
図1 アマモの体
 アマモ場(ば)には,次(つぎ)の大切(たいせつ)な役割(やくわり)があります。

1) さまざまな生物(せいぶつ)が生活(せいかつ)するための場所(ばしょ)
葉(は)に小(ちい)さな生物(せいぶつ)がすみ,それを餌(えさ)にする魚(さかな)などの動物(どうぶつ)がやってきます。また,葉(は)の間(あいだ)や根元(ねもと)には陰(かげ)ができるので,動物(どうぶつ)が安心(あんしん)して卵(たまご)を産(う)んだり,子供(こども)のころをすごしたりします。アマモ場(ば)でとれた魚介類(ぎょかいるい)はスーパーマーケットなどに並(なら)んでいます。

2) 海水(かいすい)や海底(かいてい)の砂(すな)や泥(どろ)をきれいにする
アマモは,海(うみ)の水(みず)や底(そこ)をよごす原因(げんいん)である窒素(ちっそ)やリンなどを吸収(きゅうしゅう) して生長(せいちょう)します。また,温暖化(おんだんか)の原因(げんいん)である二(に)酸化(さんか)炭素(たんそ)を吸収(きゅうしゅう)して,酸素(さんそ)を放出(ほうしゅつ)するため,アマモ場は海(うみ)や地球(ちきゅう)の環境(かんきょう) 保全(ほぜん)に大(おお)きくかかわっています。

 この発表(はっぴょう)では,アマモ場(ば)の大切(たいせつ)な役割(やくわり)についてよく知ってもらい, 「里海(さとうみ)」を構成(こうせい)するひとつの生態系(せいたいけい)でもあるアマモ場(ば)を身近(みぢか)な 存在(そんざい)として感(かん)じてください。


図2 アマモ場の役割



干潟を耕す生きものたち
生物生産学科助手
荒木 晶
 海(うみ)と陸(りく)との接するところ"波打ち際(なみうちぎわ)"は、海全体からすればごく一部に過ぎません。しかし、波打ち際はとてもたくさんの種類(しゅるい)の海の動物(どうぶつ)や植物(しょくぶつ)を数多(かずおお)く養(やしな)っていくことができます。     
 海の水面(すいめん)は、1日に約2回高くなったり低くなったりします。低い時を干潮(かんちょう)、高い時を満潮(まんちょう)と呼び、その間の部分を潮間帯(ちょうかんたい)といいます。潮間帯は、波の影響(えいきょう)を受けるために水がよくかき混(ま)ぜられ、酸素(さんそ)や二酸化炭素(にさんかたんそ)が水によく溶(と)け込(こ)み、さらには太陽(たいよう)の光(ひかり)をよく受けることができます。このことが、たくさんの種類の生きものを数多く養うことができる理由(りゆう)の一つです。
 『干潟(ひがた)』とは、この潮間帯が水平(すいへい)方向(ほうこう)に広がったところのことをいいます。潮(しお)が引くと砂(すな)や泥(どろ)の平(たい)らな地形(ちけい)が広がり、潮が満ちると海水(かいすい)に覆(おお)われて浅(あさ)い海の底(そこ)になります。砂や泥の溜(た)まりやすい内湾(ないわん)や大きな河川(かせん)の河口(かこう)に作られます。
 干潟には汚(よご)れた海水や泥をきれいにする働(はたら)き(浄化作用(じょうかさよう))があります。干潟の泥を掘(ほ)り起(おこ)こしてみると、上の方は比較的(ひかくてき)きれいですが、少(すこ)し深(ふか)く掘るとまっ黒の泥がでてきます。これは、干潟に集(あつめ)められた汚れの元(もと)である有機物(ゆうきぶつ)を分解(ぶんかい)するための酸素(さんそ)が十分(じゅうぶん)にいきわたらないからです。浄化作用を発揮(はっき)させるためには、海底の砂や泥にたくさんの酸素を送(おく)り込んでやらなければなりません。そのためには、"干潟を耕(たがや)す"必要(ひつよう)があります。干潟では、この耕すという作業(さぎょう)をゴカイ、カニ、貝(かい)などの生きものがさまざまな方法で行い、海をきれいにするお手伝(てつだ)いをしています(生物攪拌(せいぶつかくはん))。
 いろいろな耕しかたとその役割(やくわり)をもつ生きものたちの例(れい)を挙(あ)げてみます。
  1.砂や泥をかきわけながら生きものが移動(いどう)する(耕耘(こううん)).
    タコノマクラ・オカメブンブクなどのウニの仲間.
  2.巣穴(すあな)を掘ったり、砂泥に潜(もぐ)ったりする.
    スナガニ,スナモグリなどのエビ・カニの仲間.
  3.砂や泥の中の餌生物を探すときに砂泥をかき混ぜる(捕食(ほしょく)).
    ガザミなどのカニの仲間,エイなどの魚の仲間.
  4.砂泥の中の有機物を食べる生きもの(堆積物食者(たいせきぶつしょくしゃ))による摂餌(せつじ)と排泄(はいせつ).
    ナマコの仲間、ギボシムシの仲間
  5.堆積物食者による擬糞(ぎふん)の生成(栄養分として取り込まれる前に捨てられる成分).
    コメツキガニがつくる砂団子(すなだんご).
  6.水中(すいちゅう)に浮遊(ふゆう)している有機物を食べる生きもの(懸濁物食者(けんだくぶつしょくしゃ))の本当の糞と擬糞の排出.
    アサリやイガイなどの二枚貝(にまいがい).
  7.砂泥を動かないように固定(こてい)させる.
    住処(すみか)をつくるゴカイの仲間、地下茎(ちかけい)や根(ね)を張(は)りめぐらすアマモなどの海草(かいそう).

 干潟で生活する生きものの間でも、食べたり食べられたりという食物連鎖(しょくもつれんさ)ができあがっています。ゴカイやカニなどは、干潟の有機物を栄養分(えいようぶん)として取り込み成長(せいちょう)します。最終的(さいしゅうてき)には、それらの生きものが水鳥(みずどり)や魚(さかな)に食べられることによって干潟の外(そと)に持(も)ち出(だ)されたり、沿岸漁業(えんがんぎょぎょう)や潮干狩(しおひが)りなどを通(つう)じて私たちの生活に役立(やくだ)っています。
 干潟を含(ふく)めた身近(みぢか)な海の環境(かんきょう)を、人間社会(にんげんしゃかい)と共存(きょうぞん)した海である『里海(さとうみ)』として守(まも)っていきたいですね。




豊かな波打ち際の自然
生物生産学科教授
須田 有輔
 里海(さとうみ)の波打ち際(なみうちぎわ)には,大事な3つの役割があります。
  ◇ 自然の浄化機能をもつ場所である・・・《自浄作用(じじょうさよう)の場》
  ◇ さまざまな生物がすむ場所である・・・《生物生息場(せいぶつせいそくば)》
  ◇ 人々にとって心地よい場所である・・・《親水空間(しんすいくうかん)》

 自然の浄化機能(じょうかきのう)とは,波打ち際で起こるさまざまな自然の働きが,汚れた海水や泥をきれいにする作用をもっているということです。たとえば,砂浜で波がくだけることや,潮が引いたときに干潟(ひがた)の泥が空気に触れることは,汚染(おせん)の元となる有機物(ゆうきぶつ)の分解に必要な酸素(さんそ)を海水や泥の中に供給しています。
 しかし,波打ち際では,なんと言っても,そこにすむ多くの生き物たちが自然の浄化の役目を果たしていることが特徴です。ゴカイやカニは泥に穴を掘ったりすることにより泥の中に酸素を取り込む手助けをしています。水中に浮遊(ふゆう)する有機物がありすぎると汚染の原因となりますが,アサリ,カキ,フジツボなどはそれらをえさとして体内に取り込むので汚染を押さえているといえます。また,波打ち際や河口に生える植物は富栄養化(ふえいようか)の原因であるリンやチッソなどの栄養分を吸収するので,赤潮プランクトンなどが大発生することを防いでいます。ですから,このようないろいろな種類の生き物が健康に暮らすことができる環境であることが,浄化のためにも重要なのです。
 このような生き物のなかにはわたしたちが水産物として食べるものがたくさんいるので,いろいろな生き物が暮らす波打ち際は沿岸漁業のためにも欠かせません。いうまでもなく,自然の豊かな波打ち際は,いこいの場,遊びの場としてわれわれの生活にうるおいをもたらしてくれます。すなわち,最初にあげた里海の波打ち際の3つの役割はたがいに密接なつながりがあるのです。




身近な生物採集:前海岸
講演終了後、生物採集を行いました。