※所属・職位・学位は、当時のものを掲載しております。
|
海の草原「アマモ場」を知ってる? |
|
生物生産学科講師
村瀬 昇 |
|
波(なみ)が穏(おだ)やかで,河口(かこう)に近(ちか)い入(い)り江(え)や湾(わん),港(みなと)などでは,潮(しお)が下(さ)がると水面上(すいめんじょう)にまるで緑色(みどりいろ)のじゅうたんを広(ひろ)げたような場所(ばしょ)が出(で)てきます。よく見(み)ると,陸上(りくじょう)の草(くさ)と同(おな)じような細長(ほそなが)い葉(は)っぱが,ぎっしりと海面(かいめん)をおおいつくしているのがわかります。これはアマモという「海草(かいそう)」が,たくさん集(あつ)まってできた海(うみ)の草原(そうげん)で「アマモ場(ば)」と呼(よ)ばれています。アマモは,私(わたし)たちが食(た)べる「海藻(かいそう)」のワカメ,ノリあるいはヒジキなどと違(ちが)って,陸上(りくじょう)の草(くさ)と同(おな)じように,花(はな)を咲かせて種(たね)を作ります。また,アマモは,根(ね)や茎(くき)(地下(ちか)茎(けい))を海底(かいてい)の砂地(すなち)にはりめぐらせて,そこから葉(は)を海面(かいめん)に向(む)けて伸(の)ばしています。 |
|
|
写真 海面上のアマモ場
|
図1 アマモの体
|
|
アマモ場(ば)には,次(つぎ)の大切(たいせつ)な役割(やくわり)があります。
1) さまざまな生物(せいぶつ)が生活(せいかつ)するための場所(ばしょ)
葉(は)に小(ちい)さな生物(せいぶつ)がすみ,それを餌(えさ)にする魚(さかな)などの動物(どうぶつ)がやってきます。また,葉(は)の間(あいだ)や根元(ねもと)には陰(かげ)ができるので,動物(どうぶつ)が安心(あんしん)して卵(たまご)を産(う)んだり,子供(こども)のころをすごしたりします。アマモ場(ば)でとれた魚介類(ぎょかいるい)はスーパーマーケットなどに並(なら)んでいます。
|
2) 海水(かいすい)や海底(かいてい)の砂(すな)や泥(どろ)をきれいにする |
アマモは,海(うみ)の水(みず)や底(そこ)をよごす原因(げんいん)である窒素(ちっそ)やリンなどを吸収(きゅうしゅう) して生長(せいちょう)します。また,温暖化(おんだんか)の原因(げんいん)である二(に)酸化(さんか)炭素(たんそ)を吸収(きゅうしゅう)して,酸素(さんそ)を放出(ほうしゅつ)するため,アマモ場は海(うみ)や地球(ちきゅう)の環境(かんきょう) 保全(ほぜん)に大(おお)きくかかわっています。
この発表(はっぴょう)では,アマモ場(ば)の大切(たいせつ)な役割(やくわり)についてよく知ってもらい, 「里海(さとうみ)」を構成(こうせい)するひとつの生態系(せいたいけい)でもあるアマモ場(ば)を身近(みぢか)な 存在(そんざい)として感(かん)じてください。
|
図2 アマモ場の役割
|
|