※所属・職位・学位は、当時のものを掲載しております。
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航海あれこれ−3万3千キロの旅を振り返って− |
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水産大学校練習船耕洋丸船長
長友 洪太 |
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水産大学校は、耕洋丸(総トン数1,988.62トン・国際総トン数2,342トン・航海速力14ノット・乗船定員144名)と天鷹丸(総トン数603トン・国際総トン数877トン・航海速力13ノット・乗船定員82名)の2隻の練習船を有し、船舶職員となるためのライセンスコースを含む全ての学生を乗船させて実習を行っている。 |
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耕洋丸は、本年度に国内が4回と外国が1回の5航海(180日)が予定されている。 すでに4月には食品化学科と生物生産学科の3年生を乗船させて、沖縄県の石垣島まで航海し、海洋学と漁業学の実習を行った。
この15日間の実習期間中は、船上での実習ばかりではなく、石垣島においては、西海区水産研究所を訪問し、同所の研究者による講義を受けた。夏には、海洋生産管理学科の3年生を乗船させ、海洋観測などの実習を行った。
また、国の要請によって北方領土を墓参する方々を乗せて墓参のための航海を行った。この航海には、専攻科の学生が乗船し、墓参団の方々の手助けをして大変感謝された。 来る10月25日からは、海洋生産管理学科と海洋機械工学科の4年生を乗せて遠洋航海に出発する。昨年の遠洋航海にはオークランド、フィジー、ハワイなどに行き、マグロ延縄漁業の実習を行うとともに、フィジーの南太平洋大学の学生と本船を用いての共同調査や同大学のキャンパスを訪問して交流を深めた。
私の36年に亘る航海の中では、危険な事態にも遭遇した。20数年前、インド洋を航海中にインドの警備艇によって近くの珊瑚礁の島に停泊するよう命じられ、当時の船長が連行されたため、私が代わって指揮をとったこと。また、香港近くの海域を航海中に中国の軍艦が接近し、何かを叫んでいるものの言葉が通じないために進行していたところ、大砲をつきつけられたこともあった。
これまでの航海によって、国内はほとんどの都道府県を、また、外国は25カ国を訪問したが、中でもギリシャ、モロッコ、モナコ、ニュージランド、オーストラリアなどの国々が印象深かった。
このような練習船による乗船実習の意義は、海洋学や漁業学の技術や知識を学ぶことはもちろんであるが、これまで自由気ままに生活していた学生が、厳しい規則の中で団体生活をすることによって、見違えるようにたくましく成長していくことにあると思う。 |