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  公開講座

第6回水産大学校公開講座
日時:
平成13年8月26日(日)13時〜
テーマ:
「水産おもしろセミナー」
−海・・・その大きな可能性を求めて。−

プログラム
海と川で生活する魚の不思議な話
魚を食べると健康によいってホント!
ホント?海から電気が作れるの?



※所属・職位・学位は、当時のものを掲載しております。
海と川で生活する魚の不思議な話
水産大学校生物生産学科
講師  竹下直彦
1.回遊魚の生物学
 魚類が生活史の中で、ある決まった時期に一つの生息場所から別の場所へ移動し、再びもとの生息場所へ戻ってくることを「回遊」という。回遊とは自己の成長のための生育場と、子孫を残すための産卵場の往復ともいえる。魚類の回遊パターンは、海の中だけで生活環を完結する海洋回遊、淡水の中だけで生活環を完結する河川回遊、川と海を行き来する通し回遊に分けることができる。
 通し回遊魚が他の回遊魚との間でもっともきわだった違いは、塩分の異なる媒体の間を回遊するかどうかという点である。魚類も体液の浸透圧を一定に保たねばならないので、通し回遊魚は浸透圧の大きく隔たった海水と淡水の間を移動すること自体、生理的には危険な旅であるといえる。
 魚類には体内の浸透圧を一定に保つ特別な生理的機構が備わっている。イオンをほとんど含まず浸透圧の低い淡水中では、水が体内に侵入し、イオンは体外に流出しやすい状態にある。そこで、ほとんど水を飲まず、浸透圧差により鰓から体内に入った余分な水分は、低張な尿として排泄し、イオンの不足は鰓からの濃度勾配に逆らって能動的に取り込むことにより補っている。逆に体液より浸透圧が高い海水中では、体内の水が奪われ、イオン(主にNa+とCl-)が体内に侵入しやすい状態にある。そこで、海水を飲み、Na+とCl-と共に水を腸から吸収し、脱水による水不足を補い、等張な尿を少量排泄する。過剰な1価イオンは、鰓で特に発達した塩類細胞から、濃度勾配に逆らって能動的に排出される。川と海を移動する際の浸透圧調節機構の切り替えについては、淡水適応の場合には脳下垂体から分泌されるプロラクチンが、海水適応の場合には副腎皮質ホルモンのコルチソルが重要といわれている。
 魚類の通し回遊はどの様に始まり、どの様に進化してきたのかについての定説はないが、 Grossにより仮説が提唱されているので紹介したい。この説は、生物生産性の傾斜に沿って回遊現象が進化したとするものである。すなわち、より高い生産性をもつ新しい環境に、ある時期にたまたま移動したものが、生産性の低い環境に残ったものより多くの子孫を残し、繁栄していったと考えるものである。その結果、このような偶発的な移動がやがて定型化し、規則的回遊となって定着したという仮説である。低緯度地方では海より川の生産性が高く、しばしば海水魚の個体群の一部が河川の淡水域まで侵入する。このような広塩性の海水魚の中から、成長のために個体郡全体が一定期間淡水域で過ごすようになり、海水性両側回遊魚へなる。さらに、成長に有利な淡水域への依存を高めていった場合、産卵のためだけに海へ下る降河回遊魚へと進化したという。逆に、高緯度地方では川より海の生物生産性が高いので、淡水魚が海へ侵入するようになり、川に産卵場と生活史の一部を残した淡水性両側回遊魚となり、これより海への依存性が高い遡河回遊魚が生まれるという。
2.川と海を回遊するカマキリの生態(ビデオ併用)
 カマキリは降河回遊型の生活環を送る淡水カジカ類の1種である。江の川河口と隣接する海域において、 1996〜1998年12〜4月にカマキリ成魚、卵塊および卵黄嚢仔魚の採集を行った。採集された成魚の年齢組成は2歳魚が中心で1、3歳魚も認められた。複数の卵塊とともに雄成魚3個体が海域で採集され、雄親による卵保護、一夫多妻の婚姻形態が示唆された。卵黄をもつ仔魚の多くは、塩分30ppt以上の水域で採集された。また、卵発生に及ぼす塩分の影響を飼育実験により調べ、本種の繁殖には塩分10ppt以上の環境が必要と考えられた。
 カマキリの産卵行動について、8ミリビデオを併用して観察を行った。まず、雄が巣材に入ると、胸鰭を使って中の砂を掻き出す。そして、腹部を上あるいは横にして巣材内面に定位し、臀鰭で巣材の清掃を行う。これらの行動を繰り返しながら、繁殖なわばりを形成した。雌が接近すると、雄は口を大きく開き、全ての鰭を広げ、徐々に接近し、雌にかみつく。このかみつき行動はほとんど瞬間に終わり、雌を離した雄は巣材内に戻る。その後、再び口を大きく開き、各鰭を広げる。この行動を繰り返すうちに雌が自ら巣材に入り、その奥へ進み、腹部を上にした姿勢をとる。雄は雌に体を繰り返し押し付ける。雌の呼吸が速まると、雄も腹部を上にして雌と重なり、放卵・放精が行われた。
 江の川河口に隣接する海域の沿岸では、毎年1〜4月に浮遊仔稚魚(全長7〜19mm)、3〜5月に着底稚魚(全長16〜42mm)が出現した。河口域には3〜6月に侵入し、河川遡上しながら成長する。河川遡上後の成長と成熟年齢を明らかにするため、1998、1999年10〜11月に江の川の7支流で採集を行った。その7支流を、(1):都治川と上津井川(河口より7、10km)、(2):八戸川(16km)、(3):濁川と三谷川(32、36km)、 (4):尻無川と早水川(54、55km)の4水域に区分した。そして、採集標本645個体の耳石を用いた年齢査定および生殖線の組織学的観察を行い、 4水域における全長と成熟年齢について検討した。 (1)、(2)では、大型に成長した少数の0歳と全ての1、2歳魚が成熟過程にあった。 (3)、(4)では、0歳で成熟過程にあった個体は全く出現せず、大型の1歳魚と2歳魚が成熟過程にあった。カマキリの成熟年齢には流程分布に沿った違いが認められ、上流ほど大型、高齢で成熟する傾向があった。



魚を食べると健康によいってホント!
水産大学校食品化学科
教授  鈴木喜隆
 地球上の生物の先祖は,すべて海の中で生まれた。なぜ陸地に生命が発生せず,海中で発生したのか。紫外線,オゾン層,オゾンホールなどなど種々の理由はあったであろうが,いずれにせよ,そのせいで,地球上の生物は,当時の海水の成分組成を体の成分として受け継いでいる。さらに, 「食物はすべて生き物」で,生物由来でない食物は存在しない。
 この講座では,海産の食品と陸産の食品が健康に対して持っているメリット・デメリットについてお話することにしよう。以下はその数例である。
カルシウム/亜鉛不足 → 味盲/SOD不足 → 老化促進
 陸地からは,雨水によって水に溶けるもの全てが,徐々に洗い出されて海へ運び去られ,永い年月の間に陸地はしゃぶりカス同然となってしまった。このため,陸地で育った植物や,それを食べて大きくなった陸産の家畜の肉ばかりを食べていると,本来必要であるはずの微量成分が不足し勝ちとなる。太古の海底が隆起してできた大陸の場合には,比較的ミネラル分が残っていると言われているが,日本のように火山性の島国ではとりわけこのような傾向が強く,カルシウムや微量金属が不足すると考えられている。これを日本人は昔から,ミネラルを豊富に摂って成育した海の魚介類,とりわけ小骨の多い雑魚を骨ごと食べることによって補ってきたが,経済が裕福になるにつれて雑魚を食べなくなり,カルシウムや微量元素の摂取が激減することになった。さらに悪いことに,リン酸を多く含むドリンク類や獣肉類を多く飲食することにより,ミネラルの排出が活発に行われるというマイナス面が重なって,ミネラル不足が深刻になりつつある。
 最近の子供の骨折の多さには驚くべきものがある。私共の年代の子供のころ,今の子供たちの数倍も乱暴な遊びをしていたものだが,手足の骨を折った仲間を見たことは一度もなかったことを考え合わせると,カルシウム不足は運動不足とともに歴然としている。これを放置すれば,骨の発育・強度保持の面で大きな疾患をもたらす可能性があり,女性にとっては,骨粗しょう症の危険すらあることが示唆されている。
 さらに最近,若者の人格が粗暴になり,いわゆるすぐキレルという現象が社会問題となりつつある。その少なくとも一端は,カルシウム不足から来ていると考えられているが,これが正しいことは,マウスやラットをカルシウム不足のエサで飼ってみると非常にはっきりと分かる。カルシウムを十分に摂ったネズミは非常におとなしく,てのひらに載せても平気だが,カルシウム不足にしたネズミは,人の手に指がちぎれる位の強さで噛みついてくる。
 近ごろ,食べ物の味の分からないいわゆる「味盲」の子供が増えている。これは,味を感じる感覚器である味蕾に,微量元素の亜鉛が不足しているためであることが分かっているが,この「亜鉛」が,実は過酸化物を除去し,老化や発ガンを防いでいる「抗酸化剤中の抗酸化剤」とも言えるSOD (スーパーオキシド・ジスムターゼ)の必須成分であることを考え合わせると,味盲というのは,実は「老化や発ガンを速め,寿命が縮んでゆく前兆」であると言うことができる。
 これらの事実は,海産物とりわけ小骨の多い雑魚類や海藻類の十分な摂取が人の心身の健康にとって,絶対不可欠であることを示している。
環境の温度と脂肪の関係:水産物は低融点→過酸化を受けやすい
 脂肪は本来水に溶けず,融点の高い脂肪はそれ自身が固体となって析出する。そこで,体温が高い哺乳類や鳥類などの恒温動物ほど融点の高い脂肪を持ち,環境の温度で体温の変動する魚介類などの変温動物や身動きのできない植物は,最も寒い冬にも凍らないような低融点の油を体内にもっている。クジラなどのように哺乳類であっても,海に暮らすようになった海獣のたぐいも融点の低い油を保有することによって,油が体内で凍りつくことを防いでいる。
 動物が脂肪を摂取した場合,いったん消化分解した油脂を,吸収した直後に,再びえさの脂肪とほぼ同じ油脂に再合成して肝臓に運び,暫くの間はそのまま蓄えておく。すなわち,ウナギにイワシを餌として与えた場合,暫くの間は,イワシの味がするが,一週間くらいの間に自分自身の脂肪に合成し直して,ウナギはウナギ本来の味になる。逆に言えば,ウシや豚,羊などの高融点の脂肪を食べた場合,体温のそんなに高くない人間の体の中では,ウシなどの油脂そのものが凍りつくことになりかねず,人の健康にとって,由々しい事態が起こり得る。その点,低融点の魚介類や植物油を食べた際にはそのような危険性はほとんどない。
 ただし,良いことばかりではなく,魚介類の低融点の油たとえばDHA, EPAを多く含む油は,融点を低くするために,二重結合(別名:不飽和結合)を多く含んだ高度不飽和脂肪を多量に含んでいるが,二重結合をたくさん含むことにより,酸素によって,非常に酸化(過酸化という)されやすく,ガンや老化の原因となる過酸化物を作りやすいという欠点をもつ。
 それを防ぐ目的で,魚介類や植物は強い抗酸化物質を多量に持っていて,自分自身が酸化(老化など)されるのを防いでいる。魚介類や植物(野菜・海藻)を人間が摂取すれば,過酸化による健康への被害(発ガン,老化,寿命の短縮など)を,より効果的に防ぐことができる。



ホント?海から電気が作れるの?
水産大学校海洋機械工学科
教授  中岡 勉
−海から電気を作る−
 現在、電気は、化石燃料である石炭、石油、ウラン等を利用する火力、原子力発電所で作られています。
 ここでは、無尽蔵に存在する海洋の熱エネルギーを有効に利用する発電システムである海洋温度差発電 (Ocean Thermal Energy Conversion (OTEC)) について紹介します。
 海洋温度差発電は、クリーンで環境に優しい発電システムです。
−原理−
 OTECの原理を図1に示します。
 海洋温度差発電とは海水の温度差を利用して発電するシステムです。基本的な原理は100年以上前からあったものです。考え方は原子力や火力発電と基本的には同じです。海洋温度差発電がそれらと違うのは、熱源に海水の温度を使うこと。アンモニア、あるいはアンモニアと水の混合物、これを作動流体と言いますが、それを蒸発させ、その圧力でタービンを回転させて発電するという点です。作動流体を蒸発させる装置は蒸発器と呼ばれ、熱源には20〜30度の表層の海水を使います。アンモニアの沸点は約−33度。温かい海水でも沸騰し、蒸気になります。タービンを回転させた蒸気は凝縮器で冷却され液体に戻り、再度、蒸発器に送られます。冷却水には水深200〜1000mの5度以下の深層水を使います。
−エネルギー開発の必要性−
 電気(エネルギー)や水は、人類の活動には欠かせないものです。また、水産業、工業、製造業等の色々な分野で重要となっています。

 エネルギー問題については、1973年の石油ショック以来、新エネルギー技術の開発と省エネルギー技術の開発が各方面で積極的に行われています。
 エネルギー源を持たない我が国が安定したエネルギーを獲得するには、石油に代わる代替エネルギーの開発を促進させる必要があります。
 現在、推進されている石油代替エネルギーは、太陽熱、地熱、高温岩帯、波力、風力、バイオマス等があげられます。しかし、これらのエネルギー開発のみでは、これからのエネルギー需要を満たすことは出来きません。そこで、考えられるのが膨大なエネルギー源を持っている海洋の熱エネルギーの開発です。特に海洋温度差発電に関する技術は、飛躍的に発達し実用化されようとしています。

−現在の開発状況−
 OTECは、利用できる温度差が小さいために、熱効率は、3〜5%と小さくなります。そのために、OTECシステムを高性能で、かつ経済的なコストで建設するためには、詳細なトータルシステムについて検討を行う必要があります。すなわち、システム、最適な作動流体、高性能な構成機器、設置場所の選定などがあります。
 システムについては、現在、オープンサイクル、クローズサイクル、カリーナサイクル、 SUサイクル等の開発が行われています。また、省エネルギーや有効利用を目的として、OTECとヒートポンプシステム、 OTECと海水淡水化システムとを組み合わせたインテグレートハイブリッドサイクル等の研究が行われています。
−新たな産業を生み出す−
海洋温度差発電では、取水した多量の海洋深層水を発電だけでなく、次のような多目的に利用できます。
 1.海水淡水化による飲料水の生産
 2.リチウム回収
 3.深層ミネラル水の製造
 4.水素製造
 5.深層水氷の製造
 6.家やビルの冷房
 7.魚や貝、海藻等の養殖と生産
 8.化粧水、薬用水など海洋深層水関連製品の製造

 海洋温度差発電ができる地域では、海洋深層水の多目的利用を図ることにより、新たな産業を興し、多くの収入を得ることができます。また、海洋温度差発電プラントや上に述べたプラントが観光にも役に立つと思われます。
 ここでは、約20数年開発に携わってきたOTECをとりあげ、エネルギー開発の必要性、OTECの原理と特徴、 OTECの開発の歴史をたどるとともに、開発の状況、代替エネルギーの有効利用の開発等について紹介します。