平成29年度 食品製造学実習I
2018年4月18日 掲載
2018年3月1日〜7日に食品科学科2年生を対象に、食品製造学実習Iが行われました。本実習は、国内の水産加工品の中で最大の生産量を誇る魚肉練り製品を製造します。原料魚の加工から中間材料となる冷凍すり身の製造を経て最終製品を製造し、製品の品質評価までの一連の作業を行うことで、水産食品製造の流れや問題点を総合的に体験することができる実習となっています。 1日目: 食品科学科2年生にとっては水産大学校に入学して初めての実習となります。日ごろの座学とは違い実習独特の緊張感があります。この日は実習全体の説明の後、食品加工実習工 場内の清掃と器具の準備を行いました。 |
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![]() <全体への説明の様子> |
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2日目: この日は原料魚を解体して肉を採り、冷凍すり身を作製するという、実習中で最も忙しい日となりました。今回の原料はワニエソ100 kgでした。頭部や内臓を除去してきれいに洗浄した魚体を採肉機にかけて、骨や皮から筋肉を分離しました。分離された筋肉を冷水や食塩水に晒すことで夾雑物などを除去します。これらの作業で採肉された肉重量は約50 kgで した。 |
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![]() ![]() <原料魚とその解体の様子> |
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![]() ![]() ![]() ![]() <採肉機による採肉作業(上)と水晒し工程の様子(下)> |
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水晒しした後に遠心分離により脱水した肉は、肉挽機により裏ごしされ、混入した鱗などを除去しました。裏ごし肉に、凍結変性防止剤を加えて冷凍することで、冷凍すり身として利用できますが、今年の実習では約54
kgの冷凍すり身をつくることができました。 |
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![]() <裏ごしの様子> |
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日本で造られる魚肉練り製品の約9割は蒲鉾類ですが、それらは加熱方法により4種類に分けられています。「蒸し、揚げ、茹で、焼き」の4種類の蒲鉾の内、今回の実習では蒸し蒲鉾、揚げ蒲鉾、茹で蒲鉾の3種類の蒲鉾を冷凍すり身を用いて製造します。 3日目から6日目: 2日目に製造した冷凍すり身を用いて、板付け蒸し蒲鉾、揚げ蒲鉾、茹で蒲鉾を10人程度の小班にて製造しました。また、塩乾品であるカレイの干物づくりも併せて行い、4班による作業を4日間のローテーションで行いました。 板付け蒸し蒲鉾の製造: 多くの人がイメージする蒲鉾といえば木の板に乗ったいわゆる板付け蒲鉾だと思います。水を加えた冷凍すり身に塩を入れて練る作業のことを擂潰(らいかい)や塩ずりといいますが、この工程によりすり身に含まれる魚肉の筋肉から塩溶性のタンパク質が溶け出して粘りが生まれます。これを「板付け包丁」と呼ばれる専用の包丁を使って蒲鉾板に載せていきます。手先の器用な学生は、市販品と変わらない出来の蒲鉾の形をつくることができたようです。 工場内にはボイラーを介して蒸気がめぐらされていますが、その蒸気を使って蒸しあげることで蒸し蒲鉾の完成です。本実習では、自動で温度と時間を管理してくれる機械で加熱工程を行いました。低温で加熱する「坐り加熱」と高温で加熱する「本加熱」を組み合わせる二段加熱という方法で加熱を行いましたが、これまでの授業で学んだ二段加熱の意味を実体験できたのではないかと思います。 レポートにはこの加熱によるタンパク質の変化をきちんと説明することが求められますが、十分な内容を書くことができたでしょうか。 |
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![]() ![]() <擂潰機による塩ずりと板付け作業> |
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![]() ![]() <自動蒲鉾蒸し器による蒸し加熱作業と加熱終了直後の板付け蒸し蒲鉾> |
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揚げ蒲鉾の製造: 揚げ蒲鉾という名前にはなじみが薄いかもしれませんが、いわゆるさつま揚げを作製しました。揚げ蒲鉾の作製は複雑な工程や温度管理は求められず、加水した冷凍すり身に塩と具材を混ぜて油で揚げるということに尽きます。混ぜる具材は、奇数日は野菜・偶数日は海鮮となりました。中まで火が通りやすい大きさに成形して油であげれば完成です。安全な食品を作るために、一つ一つ中心温度を確認して、約6 kgの揚げ蒲鉾を作製しました。 |
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![]() ![]() <すり身と野菜の混合作業とパテの成形作業> |
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![]() ![]() <フライヤーによる揚げ作業と完成した揚げ蒲鉾> |
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茹で蒲鉾の製造: 茹で蒲鉾はつみれ等のように直接茹でてつくられますが、本実習ではすり身をケーシング詰めして茹でることになりました。加水した冷凍すり身に塩と調味料を混ぜたものを、絞り袋を使ってケーシングチューブに詰めていきました。この時の温度管理が、ケーシング詰め作業の効率を大きく左右します。写真を撮った班の作業は、お菓子作りで使う生クリームとは違い絞り袋から押し出すにも少し力が必要だった様子でした。 肉詰したチューブの両端を凧糸で結紮(けっさつ)して大きな釜で茹であげました。この日の茹で工程中には、何本ものチューブが破裂してしまったようですが、なぜこのようなことが起こったかを考察することも実習の重要なテーマです。この日の班はレポートをまとめる際に、その考察をする必要に迫られることになりました。 |
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![]() ![]() <ケーシング詰作業> |
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![]() ![]() <蒸気釜による茹で作業と作業中に破裂してしまったケーシングチューブ> |
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カレイの塩乾品の製造: 実習内容の紹介の最後はカレイの塩乾品づくりです。塩乾品、いわゆる干物の生産も水産加工品の中では大きなウェイトを占めています。作業としては鱗や内臓を除去して、きれいに洗浄し、濃い塩水に漬けて、塩水を洗い流して、乾燥させるという流れです。食品科学科の学生は1年生の間に何度も魚を捌く機会があることから、この作業はお手のものという様子で各自作業をすすめていき、乾燥機で一晩乾燥させて完成となりました。 |
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![]() ![]() <カレイの解体> |
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7日目:片付けと試食 6日目に作製した、板付け蒸し蒲鉾、揚げ蒲鉾、茹で蒲鉾、カレイの塩乾品を理事(水産大学校代表)や校長をはじめとした方々にお渡しし、試食してもらうということを例年行っています。今年の成果はどのように評価されたのでしょうか。 1週間という短い期間ですが、学生たちは本実習を通して、実際に水産食品を製造するという作業の流れや、各工程に付随する問題点を体験できたのではないかと思います。次年度に3年生となり、より専門的な授業や実験が始まるタイミングで、実体験として水産食品の製造にかかわる問題点を理解できていれば、授業内容がより分かりやすくなるのではないかと期待されます。 なお、実習5日目には山口大学農学部から8名(学生7名、教員1名)の見学がありました。日ごろ食品を作る実習をする機会がない山口大学の学生が、本校の実習風景を熱心に見ていかれたことを補足いたします。実際に食品を作るという作業を間近で見たこの経験が役立てば幸いです。 |
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![]() <山口大学農学部の学生に実習内容を説明する様子> |
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