下関フードテクノフェスタ2010の出展「アルコールブライン凍結法」 − 原田和樹教授に聞く
2010年5月6日 掲載
Q:今日は、この度開催される下関フードテクノフェスタ2010で出展される「アルコールブライン凍結法」について、開発に携わった食品科学科の原田先生にお話をお伺いしたいと思います。まず、ブラインとは聞き慣れない言葉ですね。何か、新規なものを開発されたのですか?
いえいえ、新規なものではありません。アルコールや凍結法という言葉は判りますよね。聞き慣れないのはブラインという言葉だと思います。ブラインとは、魚介類を凍結させるのに利用する液体の総称で、普通は食塩水や塩化カルシウム液が用いられています。今回は、その役割を果たすのが、エチルアルコールという訳です。 |
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水産大学校食品科学科に設置してあるアルコールブラインの装置 |
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Q:アルコールブライン凍結法を使うと魚介類の凍結にどんな利点があるのですか? 普通、魚介類を凍結する時は、冷たい空気を循環させるエアーブラストという凍結庫を使います。いわゆる、普通の冷凍庫を思い浮かべて下さい。その際、凍結した魚を解凍すると、凍結前に比べて、比較にならない程、品質が劣化しています。これは長い時間をかけて凍結しますので、魚介類の細胞の中の水が氷の結晶に成長して細胞を傷付けてしまうからです。この氷の成長がある限り、品質を保てないのです。そこで、登場するのがブライン溶液としてエチルアルコールを使う方法なのです。 Q:なるほど、画期的な新しい方法という訳ですね。 いえいえ、前に言いました様に、アルコールブライン凍結法は、決して新しい方法ではないのですが、今まで、誰もこの技術を使いこなしていなかったという訳です。 |
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−25℃でアルコールブライン凍結中のマアジ |
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アルコールブライン凍結したマアジ |
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Q:やっと判りました、水産大学校食品科学科がその技術を確立した訳ですね。 その通りです! Q:その技術のエキスだけでも教えて下さい。 そうですね、ポイントは二つあると思います。一つは、細胞内の氷の結晶を成長させない様に、急速に凍結させること。それには、最大氷結晶生成帯となる0℃から-5℃付近の間の温度帯をいかに短時間で抜けきるかが重要になるのです。なぜなら、短時間で通過すればする程、氷の結晶の成長が抑えられるからです。アルコールの濃度を変えたりして詳細に実験して、他の要因も考えて、用いるアルコール濃度を決めました。 二つ目の大事な点は、凍結する魚介類に新鮮なものを使うということです。凍結する直前まで生きていた魚が良いでしょう。魔法でも使わない限り、もともと鮮度の悪い素材が、高品質になったりしないからです。 Q:実用化に向けては、どうされたのですか? アルコールブライン凍結法を行った後、普通の冷凍庫で保存していた魚を解凍して、刺身で試食して貰ったのですが、鮮魚の刺身と変わらないと好評を頂きました。そこで、漁業者さん向けにアルコールブライン凍結法のマニュアルを作って広く無料で配付しました。 |
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アルコールブライン凍結したマアジを解凍して盛り付けたアジの姿造り |
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Q:反響はどうだったのですか? あちらこちらで利用が始まったみたいです。新しい商売として成り立っているみたいですね。水産業界の新聞の一つである「水産タイムス」の今年の新春1月1日号にも、アルコールブライン凍結法を紹介して頂きました。 下関フードテクノフェスタ2010では、アルコールブライン凍結の実演を行いますので、楽しみにしておいて下さい。 何だか、さまざまなものが展示してある今回の下関フードテクノフェスタが心待ちになりました。今日はインタビューを有難うございました。 |