研究紹介 〜福田裕特任教授に聞く〜

「EPA・DHA乳化食品の開発」


2010年4月26日 掲載


インタビュア:こんにちは、福田先生。先生が「EPA・DHA乳化食品」の開発に成功したと聞きましたので、お話を伺いに参りました。
福田先生:2年前に、この研究がスタートした時にもインタビューして頂き、ありがとうございました。

 

インタビュア:どんな製品ですか?
福田先生:これが、開発された製品です(上の写真)。一つ目はEPA・DHA入りの乳化すり身です。これは食品を作るための中間素材で冷凍保存が可能です。二つ目は乳化すり身を原料にして作ったパテ、ムース、アイス、水羊羹で、これらがEPA・DHA乳化食品です。

インタビュア:福田先生がお作りになったのですか?
福田先生:これら食品は水産大学校の研究を基礎に、フジミツ(株)の技術者が試行錯誤を繰り返し、開発に成功したもので共同研究の成果です。

インタビュア:乳化とはどんなことを言うのですか?
福田先生:通常では油と水は混じりませんね。そこで、いろいろな方法で食品中に油を細かく分散させて、その状態が壊れないようにしたものです。マヨネーズやチョコレートが乳化食品です。

インタビュア:作るのは難しいのですか?
福田先生:魚肉すり身は粘性が非常に高いので、マヨネーズやチョコレートに比べて乳化は非常に困難です。そこで、特殊な技術を使って魚油をすり身中に微粒子化し乳化に成功しました。

インタビュア:微粒子って、どのくらいの大きさですか?
福田先生:直径10マイクロメーターですから1ミリの100分の1の大きさです。この魚油の粒子をすり身の魚肉タンパク質でマイクロカプセル化します。そうすると魚油の酸化が防止され、滑らかな食品ができあがりました。

インタビュア:これらの食品の用途はお年寄り向けと聞いてますが。
福田先生:おっしゃるとおりです。お年寄り用の介護食や病院食として最適です。飲み込む能力が低下したお年寄りでも食べやすい食感にしてあります。また、DHAは脳機能の発達にも重要な成分ですから離乳食としても良いのですよ。

インタビュア:EPAやDHAの錠剤がありますが、どう違うのですか?
福田先生:魚油は乳化した状態の方が吸収は良くなります。また、口から美味しく食べることはお年寄りや病気の方にとって何よりも大切なのですよ。

福田先生:最後に、この研究は(財)山口振興財団、フジミツ(株)の共同研究機関の他に、中国地方経済産業局、(株)ヤナギヤ、NPO市民プロデュース、山口県、山口県産業技術センター、(独)水産総合研究センター、長崎県水産総合試験場のご協力を頂きました。水産大学校食品科学科では松下映夫教授、田中竜介准教授、和田律子講師、福島英登講師に共同研究に参画して頂きました。この機会をお借りして御礼申し上げます。

インタビュア:今日は役に立つ研究のお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

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