ノルウェーでのワークショップ報告
−水産食品はノルウェーの重点研究分野−
2008年9月27日 掲載
今日は、8月にノルウェーで開催された、海産食品の安全性についてのワークショップに出席した花岡教授に聞きます。 お疲れ様でした。ノルウェーは初めてですか? ええ、初めてです。20年近く前に隣のスウェーデンで国際学会に出席したことがありますが、その時には残念ながらノルウェーまで足をのばせませんでした。 どんなワークショップだったんですか? ワークショップのタイトルを直訳すると、「第3回 海産食品の安全性に関わる研究協力のための日本-ノルウェー合同ワークショップ」と言ったところでしょうか。8月の26日から29日までの4日間開催されました。ノルウェー側の担当機関は、ベルゲンという都市にあり、主に海産食品について研究を行う国立研究所のNIFESです。この研究所と日本の中央水産研究所との間で昨年までにすでに2回のワークショップが持たれ、今後の研究協力のための準備が進められてきました。中央水産研究所というのは、水産大学校と同じく農林水産省管轄の独立行政法人です。今回の第3回目ではいよいよ研究協力を実行に移すための具体的な協議も行われました。 |
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近くのフロイエン山から、会議の行われた研究所(NIFES)方面を望む。この写真も含め、以下、福田教授撮影の写真を何枚か使わせていただきます。 |
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ノルウェーの水産て、盛んなのですか? 盛んも何も、ノルウェーの主要産業はまずエネルギー関連、次いで水産業だそうです。ワークショップの冒頭で、日本で言えば農林水産省に当たるところ、直訳すると水産・沿岸省から派遣された女性担当官がまず公演されました。そこでノルウェーでの水産政策などが述べられたのですが、その内容では水産研究についての基本方針がとても印象的でした。たとえば「ノルウェーの研究政策では、海産食品は優先的研究分野である」とか「主務省は省予算の40%近くを海洋の研究と開発に充てる」とか「ノルウェーは海洋研究において国際的に先進的地位を占めることを課題とする」とかです。海産食品に限らず、水産研究や水産業のおかれている状況が日本とは大分違っているようです。 |
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どんなメンバーで参加されました? まず、団長は中央水産研究所加工利用部の山下倫明室長です。中央水産研究所から室長を含めて6名の方、北里大学から大島教授、東京大学から木下助教が参加され、さらに現地では養殖研究所の吉松博士と合流しました。水産大学校からは、食品科学科利用加工学講座の福田教授と機能学講座の私の二人です。 私の場合、先日のこの欄でご紹介したとおりヒ素のプロジェクトに関わって来たことから、参加のお誘いがありました。福田教授の場合には、何年か前、未だ中央水産研究所の利用加工部長として活躍しておられた時、自ら関わってこのプロジェクトの立ち上げに尽力されたとのことです。そのような経緯もあり、参加を要請されたと思われます。 ワークショップでは、具体的に何をどうしたのですか? まず、初日にはノルウェーの水産業に重要な位置を占めるニジサケの養殖場を見学しました。餌の散布などを自動化している近代的な施設でしたが、そういったことを50歳代位の女性がいろいろと説明してくれました。途中で、この女性が1人でその養殖場のすべてを切り盛りしているのに気付いたときには、皆非常に驚きました。なにしろ、その日の見学でも、施設の説明の他、我々を移動させるのに使う中型ボートの離岸、着岸、運転、我々の昼食の準備、すべてでしたからね。昼食はもちろんニジマス主体です。そういえば、ノルウェーでは女性の社会進出が非常に進んでいるようです。 2日目から出席者全員がそれぞれ自分のテーマで発表を行い、議論を行いました。この発表は、最初から4つのテーマに分けられていて、自分の関係するところで発表するわけです。1つ目が海産物の産地特定など、2つ目が私も参加したリスクアセスメントについてでした。私は、この中で海産食品に存在するヒ素の問題について講演しました。3つ目が品質評価についてで、ここで福田教授が凍結魚肉の品質評価について講演されました。4つ目が貝毒でした。 3日目の午後までに全員の発表が終わり、直ちにテーマごとにテーブルを囲んでディスカッションに入りました。 |
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休憩中のスナップ。中央、黒いジャケットが福田教授、その横が花岡教授 |
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テーマごとにまとめるんですね? ええ、でも単に要約するのではなくて今後どのような共同研究や人事交流が可能かなどについて具体的に論議を行いました。各テーマの責任者は論議の要点をパソコンに打ち込んで記録していきます。 で、4日目に再度ディスカッションを続けた後、テーマごとに今後の計画を整理して説明用にスライドを作成し、全員の前でプロジェクターを使って発表論議したんです。この発表内容をもとに、ノルウェー政府に方針が提案されたはずです。 |
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4日間の全スケジュールを無事こなし、ホッと一息。 | |
共同研究などはいつ頃からスタートですか? もし順調に進展すると、11月頃には双方でさらに具体的に協議できるようです。是非うまくいってくれるといいのですが。 もしうまくいったら、またこのコーナーで話を聞かせて下さい。 ええ、もちろん。喜んでお話しします。 |
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会議終了後、ケーブルカーでフロイエン山に登った時のスナップ。この時(8月末)の日の入りは午後9時だった。た時のスナップ。この時(8月末)の日の入りは午後9時だった。 |