連休があけて ― 芝恒男・食品科学科長に授業の様子を聞く

2009年5月12日 掲載

 連休が開けました。学校の様子はどうですか?
 新授業科目「魚餐とビジネス」が始まり,平成15年度から行ってきたカリキュラムの改革がゴールに近づきホットしているところです。

学生を待っていた講義棟

 魚餐とビジネスとは耳慣れない科目ですね、どんな内容ですか?
 1年時に行う魚餐の科学と文化の姉妹編です。魚餐の科学と文化で水産食品に対する関心を高めてもらい,3年時に開講される魚餐とビジネスでは、水産食品に関する仕事の具体的イメージを把握してもらいます。

 具体的にはどんな授業ですか
 業界で働く人たちに講義してもらうのですが、これまでに水産物問屋の林商店社長に水産物の宅配販売をすることの難しさを話してもらい、水産物貿易に携わる㈱クラレイの社員さんには、貿易の契約や通関実務、さらには外国で水産食品を委託生産してもらう時の苦労話をしてもらいました。

 ところで今年も食文化に関する講演会を開催するそうですね。
 ええ、学科オープンキャンパスをかねて6月7日(日)に行います。高校生、一般市民、そして水産大学校生が一緒に聞いて興味を持てるのが食文化に関する講演だと判断しています。

 どんな内容ですか?
 ホームページ上でも紹介しますが,「寿司ネタを考える」と題して築地のおさかな普及センター資料館館長の坂本一男さん。そして鷲尾圭司本学理事長に醤油の旨味と題して講演して貰います。坂本氏は、寿司ネタのはやり廃りを見て来たその路のプロ,理事長は京都大学大学院卒業後に明石市林崎漁協に飛び込んで、イカナゴでつくる「くぎ煮」の普及に努めた異色の水産学者です。
学生を待っていた講義棟

 寿司と醤油、ぴったりの組み合わせですね。
 ええ、食べるときのことを言われているのだと思いますが、実は寿司と醤油は兄弟の様なものです。

 兄弟!?
 正確ではありませんが、兄弟の様なものです。いずれも食べものを保存する技術から生まれました。穀類に食塩を加えたことから始まった穀醬が進化したのが醤油、寿司は魚に食塩を加えた塩辛から始まりました。ふな寿司を想像して頂ければわかりますが、たっぷりと塩漬けされていますね、それがやがて酢でしめて保存する技術が生まれ、そして今日の寿司の姿になっています。

 ふむ、歴史を感じますね。
 ええ、変わらずに子々孫々に伝えられるのが文化ですが、一方で歴史のなかで緩やかに変化して行く、つまり新しい技術を取り入れて変化してきたのが食文化と言えるでしょう。

 先ほどカリキュラムの改革がゴールに近づいたと話されましたが、どんな改革だったのですか?
 幾つかのコンセプトがあります。化学、生物学、物理学の総合科学としての食品科学、食の分野での科学と文化の融合,魚餐とビジネスなどの授業で行っている地域の人とともに行う大学教育、そして最後に残っているのがサービスラーニングです。

 サービスラーニングとは何ですか?
 カーター大統領の時に米国で始まったと聞いていますが,学生が大学で習ったことをボランテイア活動のなかで実践することで学んで行く、そんな意味です。

学生の腕前
 どんなことを実践するのでしょうか?
 食文化を切り口に行えないかと考えています。学生が魚食の文化を広める過程で、食品衛生などの学んだ知識の検証を行うことが出来ればと考えています。魚食文化や食品衛生の知識が地域に広まると同時に知識の検証を行う。そんな図式です。

 学生と地域、双方にメリットがありそうですね。
 ええ、地域の人とともに学生を教え,学生を介して大学教育の内容を地域に広めていく。こうすることで大学と地域が融合し,大学が地域の真の財産になっていくと思います。

 今日はどうも有り難うございました

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