海外研修員の指導を終えて:食品科学科長に聞く
2008年11月4日 掲載
養殖魚に関する海外研修員に対する指導が終わったそうですが? ええ、この30日に終わり、今日あたりに皆さん故国に帰り着いたと思います。ケニア、トルコ、マダガスカル、カンボジア、ラオス、インドネシア、ブルネイからの参加者でしたが、和気あいあい、楽しい研修期間でした。 どんなことを教えたのですか? ひとつは魚病の治療法や予防法、もう一つが魚の鮮度管理です。魚病については事前にリクエストがありますが、来日する前は魚の鮮度管理には余り興味を示されません。皆さん、故国では養殖漁業を指導する立場にあるのですが、魚を余り食べていないようです。 と言うと、ステーキとかを食べているのでしょうか? チョット舌足らずでしたね。生魚を食べていないと言うのが適切でした。また消費について言えば商業的養殖は輸出用、小さな池でやるのが国内消費用と言った感じです。国内消費用は日干しにして食べるのが多いようで、その意味では鮮度管理は必要ない。 研修員は学生とは交流されたのでしょうか? ええ、毎年研修生が来るとパーテーを催したり、交流シンポジウムを開催したりしています。研修員の英語は訛りが多くて聞きにくく、私などは逃げまくっているのですが、学生は研修員を囲んで笑い転げています。いったい何を話しているんでしょうかね? |
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交流シンポジウムと言われましたが、どんな内容ですか? 英語による論文発表会で、今年が第7回目でした。タイトルをA Petit International Symposium on Fishery Science with Harmonized Individualismと言います。訳せば「柔らかい個人主義による水産科学に関するチッポケな国際シンポジウム」となります。柔らかい個人主義をHarmonized Individualismと訳しています。 「柔らかい個人主義」とは聞きなれない言葉ですが? 高名な劇作家の山崎正和氏の「柔らかい個人主義」から引用しています。個人主義は協調性と相いれない概念のようですが、中世の堺では商人の間に協調性と対立しない個人主義が存在したと、確かそんな意味だったと思います。 つまり先生は「柔らかい個人主義」を理想とされているのですね? ええトゲトゲしいのは困りますが、個人としての人格の確立を期待しています。 研修生は日本にどんな感想をもったのでしょうか? まず親切。そして町がきれい。ゴミが落ちていないと言う意味です。次が謙虚でしょうか?毎年聞くコメントです。社交辞令ではないようです。謙虚はフランクと言い換えても良いかも知れません。ケニアの水産研究所は科学至上主義で漁民を相手にしないようなのですが、日本では漁民から水産研究所の研究員に頻繁に電話がかかってくるのに驚いていました。 日本は水産の分野で今後どんな支援を続けるべきなのでしょうか? ケニアではビクトリア湖で採れるナイルパーチをヨーロッパに輸出しています。お金になるので皆必死ですが、輸出用は政府が定めた10の港に水揚げされたものだけ。他の場所で水揚げした場合は、政府が定めた港に”自転車”で運ぶ。いいですか自転車で運んでいるんです。 |
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自転車で生魚を運んでいるんですか? ええ自転車です。それだけではありません。漁も手漕ぎボートで行うのが54%。ちょっと信じられない状況です。ですから援助すべきことは山ほどある。学生さんの内から、こんな世界の状況を改善するような仕事に携わる人が出てくるのを期待しています。 私も日本の豊かな生活におぼれすぎているのかも知れませんね。今日は有り難うございました。 |