水大歳時記(平成十年度)春 の 部
春
待ちわびる 我が身晴るるや春の香り
冬終わり 春の訪れすぐそこに 単車で風切る季節かな
暦では春来た山でも雪化粧
春来たり いつも心は雪景色
春先はいくら寝てもまだ寝足らず うつろなままに また目をつむる
旧正月
中国では爆竹(はなび)をするのはお正月
春の空
「どこまでが雲どこまでが蜃気楼」(上野たかし)にならって どこまでが雲どこまでが空なのか
春風
窓の外には風の街 ぼくの心は空の雲
春一番
青空も吹きとばすほどの春一番
霾(つちふる)、黄砂
今日ラジオで黄砂が来たと報道していた。 菅原道真の「東風吹かば…」を踏まえて 西風(はえ)吹かば春のおとずれ黄砂が来 当の日本には風邪はやる
蜃気楼(しんきろう)
蜃気楼物理の神秘を思い知り
蜃気楼揺らぐ景色の不快感
蜃気楼熱い空気が身を焼いて
蜃気楼見るとそこへ行きたいな
蜃気楼うっとり見とれてつっこむ畑(原付二号)
蜃気楼砂漠で見たらむかつくな
「蜃気楼はたしてみせぬ魚津かな」(百合山羽公)にならって 蜃気楼はたして見せぬ恋人よ
「ことごとくものの音絶え蜃気楼」(長沼紫紅)にならって ことごとくものの音絶え息も絶え
ことごとくものの音絶え金も絶え
大蛤(はまぐり)しんきろうならぬ毒を吐く
春の海
春の海 白波消えて青くなる
「どこまでが雲どこまでが蜃気楼」(上野たかし)にならって どこまでが空どこまでが水平線
オートバイから海を見て 風を切る我の目に留まる舟一艘
海の波 遠くへはこぶ ものがたり
菜の花
菜の花は美しく咲き乱れども そこに流るは汚水なり
授業
昼下がり大息つきて果てにけり
試験
テスト中 ろくなものを食べてない
試験終わり結果無視して強がるも 結果を見てから顔青ざめる
浪人の頃を思い起こして つらき日の思いをおこす試験期間
単位とは いったいいかなるものなのか
世紀末 僕の単位も世紀末 それでも明日はやってくる
今日テスト 明日もテストで三連休 テスト勉強頑張るゾ!
試験中 資料整理がそうじ時間 試験中、プリントの整理などをしていると、いつも そうじに変わっていて、時間ばかりが過ぎてゆく
ゆううつなテスト始まり まだ三日
プリントを見てもわからぬテストの答え
今年こそ と言ってみたけどまた来年 外国に 行ってみたけどここはどこ よく見ると 社会の窓が全開だ あふないと 言われてみたがもう遅い よく見ると まわりの人はどこ行った はやくこい 春よあなたはいずこかな 手に届く と思ってみたがあと少し あと五分 短い針が一回り
学ぶなら やっぱり前からこつこつと 次こそは 毎回言ってる一日前
みんながどんどん出ていって 気がついたら寂しい教室 僕一人
乗船
乗船は実習よりも遊びかな
春休み
もうすぐだ はやくこいこい春休み
吉見駅
吉見駅 何度降りても田舎だなあ
恋
会いたいと おもっている人 夢の中
酒
北酒場 思いめぐらし ひとり酒
人生
指に刻まれた何本もの皺(しわ)を見て思う 我が指に迷う道見て感ずるも たどり歩けばいつかたしなむ
人生とは旅である
今日もまたまったく打てずに黒い星 いつまで続くトラの眠り
一生懸命 やったものが 馬鹿を見る これがいまの私の心情だ
詩
空
空はこんなに広いのに 私は小さな箱の中 雲はどんどん流れてくのに 私はいつまでも箱の中 いつになったら、 私は 大きくなれるのかな
海
とてつもなく広く、どこまでも続く海 海は私たちの心をいやしてくれる。 悲しいとき、つらいとき、心がもやもやしたとき 海はそんな沈んだ心を 何も言わずに静かに優しくはげましてくれる。 そしていつも必ず待っててくれる。
ダスビダーニャ新湊(さよなら新湊)
あゆの風 肌に突き刺す新湊 はるかロシアの船見える スーパーダスター ロシア人 市内の廃車もっていく そんなに積んでどうするの うちのばあちゃんチャリ盗られ 今ごろウラジボストクかな 港で泳ぐロシア人 こっちをにらんでドブリジェ(こんにちは) ダスビダーニャ新湊 しかしそんな新湊大好きさ 我愛ニイ* 新湊 *(編者注)中国語のニイという漢字(「あなた」 の意味)がないので、片仮名で代用しました。
好きなこと 『鴨』を書いた会田綱雄さん風に 好きなことは、自分のやりたいときにやればい いじゃないか。 ヨットのセール、おまえはいつも風を浴びれて 気持ちがよさそうだなあ。
金子みすずの『おさかな』第二章
海の魚はたのしそう お米は田んぼで作られる 牛はまき場でかわれてる こいもお池でかわれてる けれども海のお魚は 誰からなんにもいわれずに 遊びつかれた頃合に こうして私に食べられる ほんとに魚はたのしそう
釣り
釣り人は、自分しか見えず 何をするにも、自分しか考えず 水を見る
釣り人は、魚を知らない そして、水を知らない
でも 何かを知っている だから釣りをするのだ 喜びなのだろう
竿を振る 沈黙のために
ウナギと人
昼は泥の中 夜は餌を求めて活発に 人は昼は活動 夜はフトンの中 ウナギは時々昼間穴から顔を出し獲物をねらう 人も時々夜は娯楽場でとどまり、楽しみを得る
カメラ
カメラはいいなあ みんなカメラを向ければ すぐに笑顔になってくれる 見つめてくれる 私はそんなカメラになりたい
底
濃青のこの惑星の底 ただ静かで、耳が痛い。 多くの生物が舞い降りようとしたが いまだにここに来ることができない。 細砂は舞い上がり、 はるか彼方へ流される。 流れは冷たい。 ここに神は存在しない。 存在するのはただの闇。 上の世界は栄光と挫折に 打ちのめされた生物が うごめく。 けれどこの闇につつまれた この惑星の底は静かだ。 ただ耳だけが痛い。
家庭教師
あの頃は自分もできなかった。 今だから教えられる。 わかっていても感じてしまう。 なんでわかってくれないの? 先生ってこんなに大変なんだ。 先生、いままでありがとう これからもよろしく。
今の私
なにかをやらなきゃって夜がくる でもやりたいことがみつからなくて やりかけの気持ちがふえていく そんな夜があっても いいんじゃないかって思えてくる そんな夜がみんなにも あるんじゃないかって思えてくる そんな夜がまたやってくる そんな夜はホットココアでもゆっくり飲もう 本当のやりたいことが見つかるまで
自分の気持ち
今の自分ほど、自分を理解してないものはない けど自分のことを誰よりも毎日考えているのは 自分だ なのに人から言われた事の方が思い当たる点が 多い 自分の気持ちに正直になろうとしても完全には なれない でも そんな自分も自分だ。 毎日 こんな繰り返し。
あの日のこと
夢の中のぼくがいて、現実の中にもぼくがいた あの日のことは忘れない
愛らしいもの
空に雪 草に露 人には涙 一見はかなく、寂しいけれど そこには命が光ってる
愛ある人へ
転勤したら、休みの日には必ず帰って来て下さ い。 その日を楽しみにして 待ってます。 でも、時々帰って来てはまた行ってしまう… こんな繰り返しはいつまで続くのですか? −私たちは いつか どうなるんだろう。
恋
あなたは今とっても輝いていて 私には手の届かない人になってしまいそうです でもあなたが眠るひまを惜しんで手に入れた栄 光だから 私はその事をよろこんであげるべきなんだよね でも、私にはそうしてあげる事ができないよ はなれるのが本当にいやだから
彼
私の知っている彼 そう、それは笑っている彼 怒っている彼、友達と冗談をいいあう彼 お酒を飲んでよっぱらう彼、私をギュット抱き しめてくれる彼 私の知らない彼 双眼鏡から地平線をみつめる彼 真剣なまなざしで舵を握る彼 こんな彼は知らないけれど このとき、一番輝いているのかもしれない
すてきな人
泣きたいときに泣く 笑いたいときに笑う こんなかんたんなことが あんがいできなかったりする 勉強ができる人なんかより これができればすてきな人だと思う
人
人はわがままだ そうでないようにみえてもわがままだ 人はおもしろい 見ているだけでおもしろい いろんな人がいる だから人生っておもしろい
馬鹿な奴
馬鹿な奴を見ると殴りたくなる 馬鹿な奴を見ると蹴りたくなる 馬鹿な奴を見ると罵倒したくなる 馬鹿な奴を見ると反省させたくなる 馬鹿は馬鹿なので馬鹿だからだ しかし自分も馬鹿な奴
心の底
世に嫌気を帯びて 世を離れるも空を切る 虚を突かれたその心は 深淵を極めんとす。 滅びゆく者たちへの忠誠なるその努力は 現実逃避の幕を破る 関所に埋もれたその才は 未だ咲かずして己を喜び 月を夢見る。
花咲き乱れる頃
花咲き乱れる頃 夜はまた をかし 人目を気にして来てみれば 驚くこと花の如し 滅びる前に 滅びるも花
狂奔
ガラスが飛び散って タカシははね起きた 「今日は早起きだ」 独り言をつぶやく 彼は今日も、貧血気味である 気が狂うのは 今日の何時頃だろうか
人生
いつの間にかこの街に 丸め込まれたのは誰 止まれないこの世界で 胸を張って生きるしかない!!
光りたい
光っていた。光っていたい。光りたい。 僕は毎晩 眠る前に今朝の自分にサヨナラを告げる 僕は毎朝 生まれ変わる。 行きたい。行きたい。生きたい。 光や水をいっぱいもらった観葉植物なんかより アスファルトを突き破る雑草の如く。
私は私でありたい
機械よりも鉄でありたい 石よりも岩でありたい カモメよりもフクロウでありたい 海よりも湖でありたい 私は私でありたい
落ちる人、やさしい人 落ちた。 また落ちた。 はいあがった。 落ちた。 落ちることをくりかえす。 よく分かる。 落ちる人の落ちていき方。 −−−−−−− やさしい人がいます。 友人の話を聞いて一緒に泣いてあげれる人。 他人を傷つけるのがイヤな人。 他人を思いやれる人。 …でも自分のことは… やさしい人になりたい。 でも、やさしい人って何だろう。
休日
朝が来て太陽の光で目がさめる 時計の針を確かめて まだねれるなと思ったら またふとんに入りねてしまう
現代社会
今の世の中はどうなっているんだ ドラッグ、売春、暴走族 犯罪の低年齢化 今の若者はどういう教育をうけているのか 最近の中年(世)代も堕落している 中年代がよくないから若者もよくないのだ あるいはその逆かもしれない 一人一人がよくならなければならない たった一度の人生だから 無駄にしないように
エッセイ
恋の歌 あまたの寝言 呪われり 恋の和歌(うた)を聴いて思ったこと。恋についての 歌は今も昔も寝言のようなもんである。別に悪いとか いいとかではなくて、あまりにも瞬間的な感じがして、 寝言と同じように意味のないもののように聞こえるか らだ。つまらないといっているわけではない(歌によ るが)。その歌がきれいごとだろうがそうでなかろう が、同じである。多分、自分の色とか、そういうもん がなければ、想うだけの歌はつまらなく聞こえるのだ ろう。
テスト中ふと外見ればかえる人 外は明るく 内暗い テスト中にふと外を見てみたら、家に帰る人がいる。 壁一枚のへだたりなのに帰る人は楽しそうで、気分は 明るいのに、こちら側は静かで、気分も暗い。